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かみ合わせの配慮
修復治療におけるかみ合わせの変化
赤矢印:閉口筋の作用方向 / 青矢印:下顎骨の筋による牽引方向
・閉咬筋の力の作用を臼歯(奥歯)で受け止められなくなると、下顎は筋(おもに咬筋・側頭筋)に牽引され後上方に移動しやすい状態となります。 それによって下顎頭による負荷を受け止めた関節円板が前下内側にズレると下顎頭はさらに後方、外側に移動し、結果として臼歯のかみ合わせが低くなることがあるわけです。
・この状態は臼歯部位の広範囲の歯冠修復時に惹起しやすく、そのまま歯冠修復がおこなわれると、治療後関節円板が元の位置にもどると奥歯が噛めないで前歯が強くあたるように感じられ、開口時関節円板が下顎頭に乗る瞬間にはクリック音が発生することを認めることがあります。 (左下図は変化のない場合)
・一般に臼歯部位の後方多数歯を同時期に歯冠修復する場合は何らかの安定性の良い材料で、あらかじめ上下顎の咬合関係を記録するか、咬合支持歯の咬合面の一部を削除せずに保存しておくことが賢明でしょう。
・なおCR(Centric Relation)=中心位は咬合診断の基礎でありますが、全顎的補綴が行われる場合に最終的支台歯歯列模型が(下図のように)マウントされた咬合器上において、後方臼歯のクリアランス(上下の歯の隙間)が著しく減少していると観察される場合は、やはり関節円板が介在されない状態で中心位記録が採得されたと考えて間違いないでしょう。 この状態で製作された修復物が装着された口腔内はいわゆる低位咬合となりますが、心理面にあたえる影響が無視されれば、それが必ずしも顎関節の病的な負荷の増大につながるか否かは、歯軋り、噛みしめの発現に依存するものといえます。
例)中心位による上下の歯列模型の咬合器付着
顎関節の変化と上下の歯の接触関係模式図
修復時のかみ合わせの変化に気を付ける
①多数歯の歯冠修復が必要な場合に上下臼歯の噛みあわせの支え(咬合支持)がなくなった状態では、下顎を持ち上げる強大な咀嚼筋の働きで、顎関節内包で下顎頭の関節円板への負荷が増大し関節円板が内側下方に偏位し易くなります。
②もしその偏位した位置で上下の歯列のかみ合わせの記録(咬合採得)が取られ、上下顎模型の位置関係が咬合器上に再現された場合、長年維持されていました咬合位とは異なる位置で歯冠修復物の製作がおこなわれます。
③口腔内に装着されても違和感が少ないことも多いものの、下顎の位置がもとに戻ろうとすれば、なんとなく奥歯が噛みきれない、前歯が当たるというような感覚が出たり、就寝中に噛み締めがあると顎関節に力が加わり易い傾向があります。
*両側性の治療では特に注意が必要です。 治療中の仮の歯自体が低位に作られる傾向もあります。
①
②
③
習慣的なかみ合わせを維持するポイント
多数歯の歯冠修復で上下臼歯の咬合支持を失わないようにすれば、顎関節内包での下顎頭の関節円板への負荷が変わらず関節円板の偏位は起こりにくいため、長年維持されていました咬合の記録を介して咬合器上で適切に歯冠修復物の製作が可能です。(片側に限局した範囲で、適正な仮の歯が装着され、精密な形成・型取りと精密な技工作業がおこなわれるのが前提)
後方臼歯の咬合接触関係を維持させる
①1歯は治療に含めず他部位の修復が終わってから、あらためて治療に加える。 精密な仮の歯で代替も可能。
②上下の歯の咬合面の安定した接触点を残せれば、咬合器の模型上で削除して修復物を製作し装着時最後に同部を削除する。
例)頭蓋上顎骨・下顎骨・顎関節の模式図
例)頭蓋上顎骨・下顎骨・顎関節の模式図
関節窩
関節円板
下顎頭
頭頸部の筋肉
側頭筋
咀嚼筋(閉口筋)
咬筋
内側翼突筋
外側翼突筋(開口筋)
例)全顎的修復治療における咬合接触関係
例)全額的修復治療における咬合接触
* "歯の形態" にこだわりの強い方は心理的な要素が大きく ”かみ合わせ” や ”咬合” への配慮だけでは収まりませんので、漫然と時間を消費するだけの無駄な施術にならないよう見極めが大切です!
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