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痛みをふせぐ

 痛みの診断

 義歯の圧迫等の物理的要因の痛みを除けば、治療中の麻酔の奏効と炎症に対する除痛が一般臨床のポイントになりますが、痛みの原因を分析し早く取ることは診断に依拠することは言うまでもありません。 歯髄炎の痛みか、感染根管に起因する痛みか、歯周炎の痛みか、噛み締めが要因の顎関節や筋・筋膜、歯根膜の痛みか、あるいは歯に痛みを感じても実際は中枢性の問題である非定型性歯痛であったり非歯原性歯痛であるか等々の鑑別。 急性痛が慢性痛に移行しないための治療の配慮も大事でしょう(参考:口と顔の痛み.info)。 以下は痛みのすくない治療について当院で日常的に利用される麻酔法や鎮痛薬の説明です。

 局所麻酔について

下顎孔伝達麻酔

 歯科臨床では無痛が達成されないために所要の処置が中途半端になってしまうことが見受けられます。 顎骨が厚く緻密骨に囲まれています下顎臼歯部位の局所麻酔は、奏効がなければ深いムシバを取り残さざるえなかったり、激痛の歯の神経(歯髄)を除去することができず、痛みを取れないままお帰りとなることもありましょう。親知らずの抜歯で歯冠を切断できず涙涙の治療?となるのは可哀想なことです。

 当院では単純な修復のための歯牙形成でも、部分的浸潤麻酔が効きにくい方には下図の下顎孔伝達麻酔(三叉神経のひとつの下顎神経(V3)から分枝した舌神経と下歯槽神経 をブロック  ; 下図参照)を施し、無痛下にて治療をおこないます。 一般に伝達麻酔は奏功時間が延長して5時間ちかく片側の舌と下口唇がしびれますので、血管収縮材の少ないタイプ(シタネスト-オクタプレシン)か、入っていないものを(スキャンドネスト)利用しております。 同一治療で他部位に使用した注射針は口腔内細菌の感染防止のため絶対使用しません。 また頬側から歯根歯髄に入る一部の末梢神経のブロックも必要ですが、伝達麻酔の効果と混同しないように伝麻奏効の確認後におこなわれます。

 

局所麻酔薬

 

 イーデント歯科室では以下の3種類の局所麻酔薬を適宜使用しております。 

キシロカインカートリッジ:リドカイン塩酸塩・アドレナリン注射剤

 1管(1.8mL)中 リドカイン塩酸塩36mg アドレナリン0.0225mg
  *アドレナリンの血管収縮作用で出血を抑制し、麻酔効果の持続時間を延長する。

        麻酔効果は最大ですが高血圧症、循環器疾患や糖尿病の方には注意が必要です。

シタネスト-オクタプレシンカートリッジ:プロピトカイン塩酸塩・フェリプレシン注射剤 

  1管(1.8mL)中 プロピトカイン塩酸塩54mg フェリプレシン(バソプレシン昇圧活性として)0.054単位
  *アドレナリン(エピネフリン)は入っていませんが、別の血管収縮薬フェリプレシンが入っています。

  →伝達麻酔や有病者・高齢者中心に使用します。 

  

スキャンドネストカートリッジ3%:メピバカイン塩酸塩製剤
   *血管収縮薬や防腐剤添加物のパラベン・亜硫酸塩が一切配合されていない国内唯一の局所麻酔剤です

   治療後のしびれが速やかに消失し、患者さんに無用なしびれの負担を与えないので短時間処置に適しています。

     循環器疾患や糖尿病の患者さんや、パラベン・亜硫酸塩に対するアレルギーの患者さんに良い選択肢となります。

  →伝達麻酔や単純治療で30分後には醒めることを目的に少量使用します。

 

 電動注射器

 伝達麻酔を使う部位でなく、麻酔が効きずらい骨質の緻密な歯のおもに歯根膜麻酔に利用します。

 

その他

 注射針の太さと表面麻酔

 おもに30(通常)ゲージから33(極細)ゲージの注射針が適宜使用されます。 刺入点の粘膜には表面麻酔を必ず塗布して針の痛みを軽減します。 また麻酔液を人肌に温めたりゆっくりとした注入に気をつけております。

  痛み止めについて

 根管治療後の痛みや外科処置後の痛み発現の可能性があるときは、受付にて下記の鎮痛効果の高い頓服薬をお出ししています。 NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と分類されるもので、鎮痛抗炎症作用の機序として胃粘膜を保護するプロスタグランジン(PG)と呼ばれる物質の生成を阻害しますので、消化器潰瘍既往の方には提供しておりません。 また妊娠中の方や幼児等には中枢性に除痛作用のあるアセトアミノフェン錠(一般名:カロナール)をお出しいたしますが、歯科特有の強い痛みにはNSAIDsほど有効ではありません。


ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン) 速くて15分、遅くとも50分程度で鎮痛効果を発揮する、即効性に優れた鎮痛薬です。

ボルタレン(一般名:ジクロフェナク) ロキソニンよりも強い鎮痛効果を持っています。

セレコックス (一般名:セレコキシブ)最高血中濃度に到達した後、濃度が半減するのに要する時間が長く、胃粘膜への副作用も比較的少ない。

​<比較>

効果が出るまでの時間(Tmax )
 ※Tmaxとは、薬を飲んでから最高血中濃度に到達するのに要する時間
ロキソニン:0.79時間  セレコックス:2時間  ボルタレン:2.72時間
効果が出る速さ比較結果: ロキソニン>セレコックス>ボルタレン

効果が持続する長さ(T1/2)
 ※T1/2とは、最高血中濃度に到達した後、濃度が半減するのに要する時間
セレコックス:7~8時間  ロキソニン:1.31時間  ボルタレン:1.2時間

効果の持続時間:セレコックス>ロキソニン=ボルタレン

鎮痛効果比較結果: ボルタレン>ロキソニン=セレコックス

 その他 緊急への備え

 局所麻酔や歯科用材料に特異的に急性のアレルギー反応を起こされる方もいます。 生死に関わるいわゆるアナフィラキシーショックや循環器の問題発症の可能性に対応するよう当院では最低限の備えとして、救急セットと酸素吸入機、AED(自動体外式除細動器)とエピペン(Epinephrine autoinjector  アナフィラキシー症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防止するための緊急補助治療剤/アドレナリン自己注射薬)を常備しております。

下顎孔伝達麻酔

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