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意図的再植
意図的再植/抜歯再植による外科的歯内療法
難治性で通常の歯の内部からの根管治療では根の先の患部への到達が不能であったり、厚い骨に覆われ根の先の歯肉や歯槽骨を開窓しての外科的な治療が困難な根管(上下第二大臼歯、上顎第一大臼歯口蓋根等)や、根の先が副鼻腔(上顎洞)に交通するような上顎臼歯の根管は、歯内療法専門医でも確実な治癒を得るのは困難です。 以下のように問題のある歯を一度抜歯してから病変部をきれいに掻爬し、歯根の開口部や穿孔部を緊密に閉鎖してもとに戻すと、速やかに断裂した歯根膜が再生し歯の機能を取り戻すことができます。 確定的診断となる微細な歯根ハセツの確認となることもあります。
臼歯の短期間矯正と再植の図解
根の先に到達困難な感染根管や閉鎖不能の穿孔が存在して臨床的な治癒が得られない。
対合歯とは噛まないように調整したうえ、矯正的挺出力をかけ抜歯時に歯根・歯根膜を傷つけないよう歯根膜腔から歯根を緩める。
丁寧に歯根を抜去する。 歯根膜が再生するよう表面を作業時以外乾燥させない。抜歯窩は病巣部のみ掻爬する。
抜去された歯根。 根充できてない根管孔の存在と病変部嚢胞組織や亀裂、穿孔がないか確認!
歯根先端付近の病変部には肉芽組織が付着しているので、歯根膜を剥離しないように除去する。歯冠補綴物は対合歯との隙間がない場合は除去する。
封鎖必要部を清潔にし維持孔付与のため回転切削器で必要最小限のドリリング。 歯根は床に落とさないように濡れたガーゼ等で把持!
封鎖剤の維持孔と封鎖後。 封鎖剤にはMTAセメント、グラスアイオノーマ、スーパーボンド等の封鎖性がよく生物毒性の無視できるものを主に使用。通常は既存の根管充填部も封鎖する。
抜歯窩に感染源の封鎖ができた歯根を戻す。歯根膜の再生再結合までの期間安静にするため、対合歯にはあたらないよう調整。浮き上がりのないよう縫合もしっかり行う。必要により隣接歯に加着。
1~2ヶ月経過し動揺圧痛がなくなったら歯冠修復をおこなう。他部位の移植歯より治癒は非常に速やか!
*なお智歯を再植することはありません!
*当院では約15年前から根尖部の確認にマイクロスコープを利用しており、歯根を過剰に切除しません。
上顎第二大臼歯(3根)の短期間矯正と再植治療の実際例
抜随処置後歯冠修復するも咬合痛があるため、当院で根管治療を開始するも、根管追求の途中で穿孔の存在や残留物の除去不能が確認される。
複根管(3根)のうえ後方大臼歯で他の外科的歯内療法が不可能な部位のため、抜歯再植による口腔外での患部の閉鎖を試みる。
歯根がハセツすれば抜歯対象になり、歯根膜が剥離すると、将来癒着と置換性吸収がおこる。
そこで手前の臼歯に固定源を置いて矯正的な挺出力をかけ抜歯時に歯根・歯根膜を傷つけないよう歯槽窩から歯根を緩めてから上記同様の治療。
長大な犬歯の短期間矯正と再植治療の実際例
上顎犬歯は人間の歯で一番長く根尖は眼窩のすぐ下付近にあるため、根管充填材が緊密に加圧充填されにくく、感染根管で嚢胞形成があっても、図のように先端が歯槽骨から突出してる状態(開窓:fenestration)の場合はX線写真に透過像が写らない。 また外科的な歯根尖切除術も困難である。
以下の例は対合歯が触れない状態で矯正装置を使用し挺出力をかけ、歯根・歯根膜を傷つけないよう歯槽窩から歯根を緩めてから上記同様の治療。
副鼻腔(上顎洞)に根尖が抜けている場合の再植治療の実際例
副鼻腔
病変部
上図のような外科的な歯内療法(いわゆる根尖切除術)は、頬側の骨から開窓できる根尖病巣が対象であり、歯肉を剥離すると問題のある根尖周囲が視認できるので、的確な掻爬(debridement)と開放根管の封鎖ができれば治癒に向かいますが、難度の高い手技が要求されます。 また術後の腫脹は一般に数日顔面に分かるほどのものとなります。
副鼻腔
病変?
左図のように根尖が副鼻腔に抜け根管と交通している場合は根尖部への外科的なアプローチが無理なうえ、薬液が鼻腔に逸出することもあり通法の内部から感染根管治療も奏功しにくいことがある。下は矯正装置を使用し挺出力をかけ、歯根・歯根膜を傷つけないよう歯槽窩から歯根を緩めてから上記同様の治療。
感染根管治療終了するも違和感
大臼歯から挺出力加える
根尖孔の封鎖
治療前
治療後数週
緩みが生じた後に抜歯
元の歯槽窩にもどし縫合
修復治療後8年
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